昔の人も猫を飼っていたの?飼い猫の歴史とルーツ

人はいつから猫を飼うようになったのでしょうか?

たくさんの種類の動物の中から、なぜ猫をパートナーとして選んだのでしょうか?

日本と海外で、猫の飼い方に違いはあるのでしょうか?

そんな疑問に答えることができたら、周りの愛猫家の中でも一目おかれることでしょう。

ぜひこの記事を読んで、猫の雑学王になりましょう!

1万年前から始まる猫とヒトの深い関係

長い間、猫が人間と暮らすようになったのは約5,000年前の、古代エジプトの頃と言われてきました。

当時は、倉庫に蓄えた収穫物をネズミから守るためという、極めて実用的な理由で猫が飼われていました。

ところが2004年にフランスの考古学チームが、紀元前8500年~前7000年頃のものとされるキプロス島のシロウロカンボス遺跡で、埋葬されたと思われる猫の骨を発掘します。

さらに、その猫の骨から40cmときわめて近い場所から屈葬された人骨が出土されました。

その人骨にはたくさんの装飾石や石器類が一緒に副葬され、地位の高い人物であったことが予想されます。

この発見が、現在では世界最古の「飼い猫」の痕跡ではないかと言われているのです。

ちなみに、この猫の骨格はアフリカン・キャットの仲間で、生後8~9か月で埋葬されたと考えられています。

やっと牛や豚が家畜として飼育され始めたころに、すでに猫が家族の一員として認められ、大切に飼われていたとは驚きです。

その後も猫はペットとして愛され、古代エジプトでも絵画や壁画、彫像などに多く採用されています。

飼い主である王様や貴族が亡くなると、猫も人間と同じように何枚もの布で覆ったミイラにされ、飼い主と一緒に手厚く葬られたといいます。

古代エジプトの頃から、猫はネズミを捕って大事な食料を守るだけでなく、ペットとしても人々に癒しを与えてくれていたのですね。

日本に猫がやってきたのは古墳時代?

猫は他の多くの外国文化と同じように、西洋から中央アジアのシルクロードを通じて、中国を経由し日本にやってきました。

様々な説がありますが、日本史では古墳時代後期にあたる6世紀半ばに、猫は仏教文化とともに中国から船で持ち込まれたと考えられています。

当時、猫は輸入品としてではなく、長い航海に必要な穀物や日本に伝えるべき仏教経典をネズミから守るために連れてこられたとのことです。

では、日本で猫がペットとして可愛がられるようになったのはいつ頃なのでしょうか?

古代エジプトと同様に、日本でも猫はその優雅な佇まいから高貴な人々の人気を集めました。

平安時代(794〜1185年頃)には、日本最古の飼い猫の記録である宇多天皇(867〜931年)の日記「寛平御記」に、飼っていた黒猫の話が記されています。

宇多天皇は稀代の猫好きとして知られています。

父親が大宰府の役人から譲り受けた猫を、宇多天皇があまりにも長い間眺めて可愛がっていたために、たった5日で天皇に譲ったというほほえましいエピソードを綴っています。

その後も、清少納言の「枕草子」において、一条天皇が宮中で飼っていた猫の記述が見られます。

一条天皇もたいそうな猫好きで、飼い猫に「命婦(みょうぶ)のおとど」と名付けていたというエピソードが書かれています。

「命婦」は従五位下以上の位階を有する女性の呼称で、実際に高貴な女性と同じように乳母までつけられていたというので驚きです。

庶民の間でも猫が飼われるようになったのは鎌倉時代からで、当初はネズミ駆除という目的が強かったのですが、徐々に現代のように家族の一員として認められていったようです。

西洋と日本、猫の立場は大違い!


古代エジプトでは猫が神格化されており、猫の木像やブロンズ像が多数発掘されていることからも、猫に対する信仰の篤さが伺えます。

エジプト神話に登場する女神「バステト神」は、当初メスのライオンの姿をしていましたが、それが徐々に柔和なイメージの猫へと変わっていきました。

中世ヨーロッパでも、猫は大事な穀物をネズミから守る「麦穂の精霊」として崇められたそうです。

その一方で、ヨーロッパ史に残る悲劇「魔女狩り」において、女性が猫を飼っているというだけで迫害されたという記録も残っています。

西洋では、猫は持ち上げられたり忌み嫌われたりと、ジェットコースターのような運命をたどってきたのですね。

一方日本では長きにわたって、猫はより身近な存在でした。

日本の飼い猫は愛玩動物やネズミ捕りとしての意味合いが強く、江戸時代になるまで犬のように縄でつないで飼育されていたようです。

また、ネズミを捕らせるために屋内より外で飼うことが多かったとの見解もあり、今よりも動物的に扱われていたことが伺えます。

江戸時代以降は、飼い猫のために「猫の蚤取り」というトリマーの前身のような職業が出現し、徐々に猫は人間同様に可愛がられるようになってきたようです。

日本においても猫を穀物霊(穀物の守り神)として信仰する例はありましたが、猫が繁殖によって数を増やし庶民にも広まっていくと同時に、神性は薄れていったようです。

それでも「招き猫」に代表されるように、縁起物として猫を大切にする文化は今も残っていますね。

いかがでしたでしょうか?

猫は本当に長きにわたって、ペットとして人々を癒し、ネズミ捕りとしてせっせと働いてきたのですね。

こんなにも人間の歴史とともに歩んだ動物は、猫以外にいないのではないでしょうか?

何気ない愛猫との生活も、猫と人間の歴史を知るととても尊いものに思えてきますね。

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